サンロード青森

~『奪還』 サンロード魂を胸に~

【2023年の見どころ】

 今年の題材は、『北の燿星「毘沙門天」』である。

  毘沙門天は仏教における、天部の仏神で四天王の一尊に数えられる武神である。

 多聞天とも呼ばれ、十二天の一尊で北方を守護する。日本に於いては、五穀豊穣・商売繫盛・立身出世といった、現世利益を授ける七福神の一柱として信仰されている。

 このねぶたは、観音菩薩の脇侍として対で並ぶ事が多い、不動明王の化身である倶利伽羅竜王の御加護を得、眷属の鬼である羅刹と夜叉を従え、この世の悪を追い払わんと身構える毘沙門天の勇姿である。

 

 この物語から、疫病や争い事がこの世から無くなり、幸せや平和が広まることを、北の地青森から心より願うという意味が込められている。

 送りには、今年で生誕1250周年である空海が描かれている。

 今年も入賞という目標や、地元と密着し、ねぶたの繁栄やねぶた祭りを通して地域貢献をするショッピングセンターとしてあり続けたいという想いは不変である。そのため、「ねぶた祭りを地元としてどうしていくか」を常に考え出陣している。また、制作者であるねぶた師の吉町勇樹氏は2年目ということで、昨年よりも気合を入れて制作されており、剣の青と竜の赤の使い方や色のぶつかりを防ぐなど、特に色にこだわっているため、是非、注目して欲しい。

 また、今年は新型コロナウイルスによる制限がなくなったことによりコロナ禍以前の運行に戻す、囃子の台車の一部を新調する、太鼓6台を横一列に並べるなど工夫しているため、昨年よりもパワーアップした運行を見ることができる。

 

【運行団体の歴史】

 サンロード青森は、地元の人々に開業を知ってもらおうという目的で出陣することを決めた団体である。開業準備に追われるなか、ショッピングセンターの呼称の周知も兼ね、ねぶた祭りに参加することが良いのではと地元の出店者からの話もあり、制作が進められた。今年で44回目の出陣となる。

 

【運行について】

 運行日程は8月3日~7日(昼)の5日間である。

 曳き手は現在、高校生のアルバイトが主となっており、HPで募集しており、その中には女性も多く存在する。跳人は特に子供連れ(ファミリー層)の参加が多い特徴があり、前方にベビーカーを押して参加することができたり、参加してくれた子供にお菓子プレゼントしたりなど、小さな子供でも安心して参加しやすいように工夫されている。浴衣はサンロード専用のものもあり、その他に主たるスポンサーの富士通・郵便局各々の専用の浴衣などを着ている。

 囃子は「サンロード青森ねぶた囃子会」で約80人所属している。以前は「青森正調ねぶた囃子保存会」にほとんどの団体が依頼していたが、自分たちで囃子をやろうと平成3年に結成している。練習場所は倉庫を壊してしまったので、全体練習は荒川小学校の体育館やワラッセを借りて、パート毎の練習はサンロードの会議室で行っている。また、入会したものはみんな笛から指導し、メロディーを覚えた人から希望の楽器へ移行するため、全員が笛を吹くことができるというのが特徴である。また、サンロードといえば出発前の「集合・出陣太鼓」がある。これはサンロード青森囃子会のオリジナルである。スタート地点で「これから出発するぞ」という意味合いを込めて演奏され、大太鼓6台を使用しており、大きな見せ場となっている。そしてサンロード青森は、プロの演奏家である鳴海昭仁氏が指導者として携わっており、サンロード青森のねぶた囃子を盛り上げている。

 サンロード青森の運行は、出店者の店長からなる店長会を中心にテナント及び主協賛先の方々に参加してもらうなどして人数を調節している。

 

【制作について】

 1975年の初年度は、出陣を決めたのが祭り間近であった為、千葉作龍氏から山内岩蔵氏を紹介頂き、その後石谷進氏、そして再び千葉作龍氏が制作をすることとなった。山内岩蔵氏は1977年の1年間、石谷進氏は1978年から4年間、千葉作龍氏は1982年から2019年まで制作をした。千葉作龍氏は、2012年に第五代ねぶた名人に選ばれ、その後2016年大型ねぶたを制作して50年目を迎えた。

千葉作龍氏とは2020年(オリンピックが開催された時期)にサンロードの代表者である櫛引氏と2人で今後についての話し合いが行われており、その後中止が発表された。翌年の代替イベントでは千葉作龍氏は制作者ではなく関係者の立ち位置にいた。そして、千葉作龍氏は「2022年はどう、けじめをつけようか」と考えた末、昨年、最後の弟子である吉町勇樹氏に譲ることにした。

 大型ねぶたの題材は例年、経済情勢や災害の克服し平和を願うといったことが含まれていることが多い。

 また、今年の前ねぶたは、協賛である富士通Japan(株)と共同船舶(株)の2台が出陣する。

 

文責:熊地勇樹

 

写真2023年 サンロード 『北の燿星「毘沙門天」』 制作者:吉町勇樹