ヤマト運輸ねぶた実行委員会

~運送も運行も安全第一!~

 【2023年のねぶた】

  2023年のヤマト運輸のねぶたは北村隆氏の「綱館」である。

「綱館」とは、源氏綱が九條羅生門で鬼の腕を落として、それを家に持ち帰った。腕を取り返そうと企んだ鬼は綱の伯母に化けて彼の家に侵入し、「鬼の腕を見せてください」と綱に言う。そこで綱が腕を持ってきたところで正体を現し、腕を取り返そうとする話である。

 「綱館」はねぶたの中でもデザインが固定化しやすい題材である。しかし、北村隆氏は「型にはまらないねぶたを作りたい」という気持ちが強く、鬼と源氏綱が家で戦っている場面を黒蜘蛛の登場や瓦が飛び散る躍動感で、今までの固定化されたイメージをいい意味で壊そうとしている。

 昔ながらの題材ということもあり、「原点回帰」という言葉が似合うねぶたとなることが期待される。昨年のヤマト運輸のねぶたは明るいねぶたというイメージが強かったため、今年のねぶたを見て新鮮な感覚を味わえるかもしれない。

 見どころはねぶただけではない。今年は運行に使用される山車の台車や提灯を一新する。さらに、クロネコヤマトコールも復活する可能性がある。楽しさと安全性を意識した運行で観客とヤマト運輸でねぶた祭りを盛り上げることが大いに期待できる。

 

【歴史】

 全国の運送会社の代表で組織している会合が偶然ねぶたの時期に青森で開催され、その時に日通のねぶたが参加ていることにヤマト運輸関係者が刺激を受けた。特に宅急便の仕組みを作ったヤマト運輸2代目社長が、ねぶた祭りを気に入り当時の担当者が出陣に向けて準備することになった。出陣までに2~3年かかっており、観光ねぶたとして出陣していた「大和山(青森県教区連合会)」の枠が空いたところにヤマトが推薦されて運行することとなった。当時担当していた社員がねぶた師の穐元鴻生氏と顔見知りで、穐元氏がデビューするタイミングに依頼することができた。また、穐元氏の一番弟子である大白我鴻氏に意思を継いでいただき3年ほど依頼した。その後北村隆氏に依頼し現在に至る。毎年、青森の主管支店長が団体責任者、労働組合の青森の委員長が運行責任者として参加している。実行委員は青森市内の集配しているドライバーで、日中が忙しい。メンバーはヤマトの社員だけで構成しているため、仕事をしながら稼働の合間をみて会議を行っている。

 

【運行】

 実行委員30人、ヤマトの主管支店社員20人、アルバイト80人が中心で運行している。今年はそれらにさらにスタッフとして40人が増援されている。また統制班も別にいて、跳人はヤマトの関係者だけで100~150人もいる。跳人と一緒に、「クロネコジャンプ」と呼ばれたものや、「クロネコヤマトの宅急便」というフレーズの掛け声を20年近くやってきた。囃子会である「夏響会」の運営の助成金はヤマト運輸から出しているため、会費を取らなくても最低限の運営はできる。最初は社員と取扱店だけで構成されていたが、今では一般の参加者と一緒に行っていて、会長もヤマトの社員ではない。会員は大人子ども合わせて約100人。ヤマト運輸の本社公認の祭りは青森の「ねぶた」と四国の「阿波踊り」のみである。予算も決算も会社の経理と同じで、経費として申請するので無駄遣いはしないようにしている。

 

【制作】

 ねぶたはねぶた師の一番作りたいものを作ってもらっている。4年前からLEDが全体の7~8割を占めるため、700~800個はLEDを使用している。色や明かりの表現によっては、白熱球と蛍光灯を使い分け、白熱球の代わりに省エネボールを組み合わせて使用している。基本的には、ねぶた祭りが終われば壊し、また新しいねぶたで表現してもらう。一番の希望は一年間ご褒美で見せることができるワラッセに入ることで、そうすれば、出張で来た県外の方たちにもヤマトのねぶたを見てもらうことができるからである。結団式に当たる「三位之会」でねぶた絵図のお披露目をする。

 

【囃子】

 ヤマト運輸ねぶた実行委員会の囃子はヤマト囃子方夏響会が担当している。夏響会の名前には、囃子が夏の空に響き笑顔で奏でるという意味が込められている。女性も男性に負けない迫力で演奏をするのが特徴的である。賞を狙うよりも最後まで笑顔で楽しく演奏できればよいと考えている。進行囃子、戻り囃子は細かい部分に関してこだわりを持っており、特に昔から受け継いできた、ころばし太鼓は非常に大切にしている。

 

文責:松村南

 

写真:2023年 ヤマト運輸ねぶた実行委員会  『綱館』  北村隆